2020年8月7日から、「MAYAインディー」というインディーユーザー向けのMAYAライセンスが販売開始されました。
購入サイト:https://makeanything.autodesk.com/maya-indie-japan#elegible
登場してからだいぶ時間がたっておりますが、私恥ずかしながら最近になってこのサービスの存在に気づいたんですよね…
というわけで、自身の理解を深めることも兼ねて、
・MAYAインディーはどんな人向けのサービスなのか?
・MAYAインディーの利用資格についての詳細を考察
以上について紹介していきます。
MAYAインディーについて
機能
機能制限はありません。本家MAYAのすべての機能を使うことができます。
しかも、学生版MAYAと違い、商業利用可能です。
ただし、商業利用には一定のルールが存在します。それについては後述します。
価格
年間40,700円(税込)(2020/11/26時点)です。
本家MAYAが年間272,800円(税込)(2020/11/26時点)であることを考えると、破格の値段です。
以前からソフトの値段が高いと感じていましたが、ここにきて約85%OFFの値段で使えるようになる日が来るとは思いませんでした。
利用資格
本家MAYAと同じ機能をすべて使うことができて、激安の値段で購入可能といいことづくめですが、当然、使うことのできるユーザーは限定されています。
利用資格の条件に付いて、Autodeskのホームページから抜粋します。
・クリエイティブ制作による年間総収入が 1,500 万円未満であること
・お客様は 10 万米ドルを超えるプロジェクトでライセンスを使用することはできません
・1 人のユーザーまたは 1 つの組織につき、1 つのサブスクリプション ライセンスのみ利用可能
・本キャンペーンの提供対象国:カナダ、米国、メキシコ、ブラジル、オーストリア、ベルギー、チェコ共和国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ハンガリー、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ロシア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、イギリス、ブルガリア、クロアチア、キプロス、エストニア、ギリシャ、アイルランド、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、アイスランド、リヒテンシュタイン、オーストラリア、インド、ニュージーランド、シンガポール、日本、韓国、マレーシア、中国
出典:https://makeanything.autodesk.com/maya-indie-japan#features
この利用資格の文章の中で私が解釈に迷った点が、「お客様は 10 万米ドルを超えるプロジェクトでライセンスを使用することはできません 」という文章。
Twitterでも疑問の声が上がっていました。
全然詳しくないけどちらっと流れを見てると、Mayaのインディー プロジェクトが1000万以内なの?商用利用がほぼ無理じゃね・・・・・・・・・・・?
— 唯 (@yui3D) August 7, 2020
Maya Indie、制作で10万ドルを越えるプロジェクトでは使えないのか…
もはやインディープロジェクトでも10万ドルは余裕で越えると思うんだけど、実質趣味のプロジェクトだけってことか。— alwei (@aizen76) August 6, 2020
10万米ドルって日本円でだいたい1,000万円です。
普通の会社であれば、年商1,000万以下のプロジェクトって珍しい方ですよね。
なので、そこそこ以上の規模のプロジェクトに関わる際、MAYAインディーを使うことができないのであれば、結局のところ商業利用は難しいのではないか、という疑問が出てきます。
確かに、利用資格の文章だけを見るとそのように解釈することができます。
ですが、本当にそう解釈していいのか? 実は別の解釈ができ、そこまで条件が厳しいわけではないのではないか?
もっと詳細を知りたいという気持ちが湧きます。
そこで、Autodeskのホームページの「インディー ゲーム開発者/デザイナー向けの Maya および 3ds Max よくある質問(FAQ)」にて、さまざまな疑問に答えている内容が書かれてあったので、下記にFAQを読み解いた内容を紹介していきます。
MAYAインディーの商業利用における資格についての掘り下げ
年商10万米ドルを超える会社に勤めている場合、使用できない
年商 10 万米ドルを超える組織に雇用されている場合は、お客様自身の収入が 10 万米ドル未満であっても、インディー ユーザー向けライセンスを使用する資格がありません。年商 10 万ドルを超える企業は、企業およびアーティストに必要な商用ソフトウェア ライセンスをすべて購入した上で使用することが求められます。
会社勤めの方がMAYAインディーを本業で使用するのは無理、と考えた方がいいです。
まあ、そもそも会社勤めの場合はソフト購入費は会社負担のところがほとんどだと思うので、MAYAインディーのメリットは基本的にありませんが。
副業として使う場合、プロジェクトの収益が10万米ドルに達していなければ、使用できる
Q:私は少人数のアーティスト グループの一員としてプロジェクトに取り組んでいます。グループのアーティストは皆、他に本業を持ちつつ、副業でこのプロジェクトを行っています。各アーティストの本業の収入はそれぞれ 10 万米ドルを超えています。このプロジェクトは副業で行っているため、法人を設立していません。副業として行っているこのプロジェクトの収入が 10 万米ドル未満の場合、インディー ユーザー向けの 3ds Max と Maya を使用する資格はありますか?
A:法人を設立せず、副業として行っているプロジェクトの収益が 10 万米ドルに達していない場合、インディー ユーザー向けの 3ds Max と Maya を使用する資格があります。
副業で利用する場合、本業と分けて考えることができ、副業で関わるプロジェクト収益が10万米ドルを超えない限りはMAYAインディーを使うことができるということですね。
フリーランスの方が年商10万米ドルを超える会社からプロジェクト参加を依頼された場合、使用できない
あなたはフリーランスとして、ビジュアライゼーション作成の仕事を建築会社から依頼されました。同社の年間収益は 10 万米ドルを超えています。プロジェクト完了まで、あなたには時給/日給/週給で報酬が支払われ、作成したアセットは同社に帰属します。この場合、インディー ユーザー向けライセンスを使用することはできません。
たとえ年収1500万円以下のフリーランスの方でも、規模の大きい会社のプロジェクトに深くかかわる場合は、MAYAインディーは使えないようです。
フリーランスであれば、年収1,500万円以内のルールを守ればわりと自由にMAYAインディーを使える、と思ってましたが、そうはいかないようです。
フリーランスの方が年商10万米ドルを超える会社からデジタル製品の作成を依頼された場合、その収入が10万米ドル未満であれば、使用できる
あなたはデジタル製品を制作・販売しています。ある日、年間収益が 10 万米ドルを超えるゲーム会社から、既製またはカスタム ビルドのアセットを提供する依頼を受けました。あなたが納品した「製品」に対して、所定の金額が支払われます。この場合、あなたの収入が 10 万米ドル未満であれば、インディー ユーザー向けライセンスを使用できます。ここでのアセットは、例えば 3D モデル、テクスチャ、レンダリング イメージなどが含まれます。
解釈がややこしい部分ですが、
会社のプロジェクトとは独立して、デジタル製品の製作物を会社に納品する、という形であれば、会社の年商規模は関係なく、MAYAインディーを使うことができる、ということです。
例えば、ランサーズやクラウドワークスなどのクラウドソーシングサイトで年商10万米ドルを超える会社からの3DCGモデルの作成依頼を受けたとき、データを納品して得られる収入が年間10万米ドルを超えなければMAYAインディーを使うことができる、ということになります。
商業利用における資格の掘り下げまとめ
・会社勤めでは、基本使えないと思っていい
・副業であれば、関わるプロジェクトの収益が10万米ドルを超えなければ、使うことができる
・フリーランスで年商10万米ドル以上の会社のプロジェクトに参加する場合、たとえ年収1,500万円以下でも、使うことができない
・フリーランスで年商10万米ドル以上の会社からデジタル製品の製作依頼を受けた場合、納品して得られる収入が10万米ドル以下であれば、使うことができる
MAYAインディーを商業利用するのは主にフリーランスや副業、インディー系開発者の方になるでしょう。
フリーランスでの商業利用の際、関わるプロジェクトの規模が大きいか小さいか、会社のプロジェクトに深く関わるか否かでMAYAインディーを使用できるかできないかが分かれることになります。
MAYAインディーはどんな人向け?
上記の内容を踏まえると、MAYAインディーは以下の人向けになります。
⇒無料CGソフトのBlender以外の選択肢も出てきたというイメージ
・MAYAを独学したい方
⇒MAYA LT以上の機能を使うことができるのはGood
・副業や小規模制作でMAYAを使いたい方
⇒同人活動や、文字通りインディーズ作品の制作など
・会社のプロジェクトに深く関わらないフリーランスの方
⇒会社のプロジェクトとは独立した存在として、依頼されたデジタル製品を制作・納品するスタイルのフリーランス活動が中心の方向け
まとめ
・「MAYAインディー」という安価でMAYAの機能をフルに使えるサービスが2020年8月7日から販売開始
・MAYAインディーを利用する条件の中に、「お客様は 10 万米ドルを超えるプロジェクトでライセンスを使用することはできません」というものがあり、これが商業利用を大きく制限している
・商業利用する場合、主に副業やインディー系開発、フリーランスの方が利用することになるが、会社と関わって仕事をする際は利用資格を逸脱する可能性が大きくなるので注意
最初にMAYAインディーのサービスが登場したというニュースを見て、フリーランスの時代が本格的に来たなと思いましたが、思ったより商業利用の制限が厳しいことが分かり、そこまでフリーランスに優しいサービスではないことが分かりました。
ただ、AutodeskホームページのQ&Aの詳細説明があいまいで、抜け道的な解釈ができそうな内容だったので、今後何らかの利用資格のアップデートがあるかもしれません。
私個人の願望としては、小規模フリーランスの方を支援するような条件緩和の方向で改訂していただけることを期待しております。