【体験談】社会人でデジタルハリウッドの本科CG/VFX専攻を卒業した感想【3DCG】

3DCGスクールについて

先日、デジタルハリウッド東京校の本科CG/VFX専攻を卒業しました。

前職とまったく異なる職種である”3DCGデザイナー”になるべく、一年間3DCGについて学んできました。ようやく卒業するまでに至ったので、これまでの勉強生活を振り返って、どんなことをしてきたかをまとめてみました。

この記事では、

・デジタルハリウッド本科CG/VFX専攻ではどんなことが学べるの?

・デジタルハリウッドに入学したきっかけは?

・どんな生活スタイルで勉強してきたの?

・3DCGのスキルはちゃんと身につくの?

といったことに答えていく内容になります。

デジタルハリウッド本科CG/VFX専攻って何?

デジタルハリウッドの社会人コースには、3DCGに関わるスキルを一通り学ぶことができる学科が3種類あります。

その中でも私は、3Dモデリングスキルの他にVFX(水や爆発のようなエフェクト技術)を作成するHoudini、キャラクターのしわや窪みなどを細かくモデリングすることのできるZbrushといった専門的なツールについて学ぶことのできる、本科CG/VFX専攻を選びました。

学生や社会人どんな人でも入学することができるため、クラスメイトの年齢層は幅広いです。

基本的に週2回の授業があり、
MayaというCGモデリングツールを中心としたメイン授業
HoudiniやZbrush、UnrealEngine4などの自分が学びたいと思うソフトについて選択授業形式で選ぶことのできる専門授業がありました。

一年間在籍することになりますが、大きな目的は3DCG業界に就職するためのスキルの取得、そしてポートフォリオ(自身のスキルをアピールするための作品集)の作成となります。

一年間を通して作品の講評会の機会が3回あり、その過程で制作してきた作品をポートフォリオにして、就職活動でアピールするための武器としていきます。

社会人用の3DCGを学べる学科は本科CG/VFX専攻のほかに2つのコースがありますが、それぞれの違いについてまとめた記事がありますので、興味があればチェックしてみてください。

↓記事はコチラ↓

入学したきっかけは何?

今までとはまったく違う仕事につくことで現状を変えたいと思ったからです。

私は以前は某電機メーカーのメカ設計の仕事をしていましたが、仕事内容や人間関係がどうしても肌に合わず、自分に合う仕事が他にあるんじゃないかと考え、別の道を模索していました。

もともとゲームやアニメが好きで、それらにかかわることに昔から憧れがあったのを思い出し、3DCGの分野に将来性を感じたことと、メカ設計の仕事で3DCADソフトという家電の部品をモデリングする作業をしていた経験があり、その作業自体はわりと好きだったこともあり、3DCGモデラーという道に活路があるのではと考えました。

まず最初にやったのが、自分自身の3DCGモデラーとしての適性の確認でした。

Mayaの人体モデリングの参考書を一冊購入し、自分で人体モデルを一通りモデリングしてみるということをやり、わりと苦痛も少なく完成させることができたので、モデラーとしての適性はありそうだなと手ごたえを感じました。

”やりたい仕事”と”自分に合う仕事”は必ずしも同じとは限りません。新しい道を行くと決める前に、その分野について小さくてもいいので試してみる、というのは人生の無駄な道のりを減らすという意味でも重要なのではないでしょうか。

実際に私が使っていた参考書は↓コチラ↓

次に考えたのは、3DCGについて学習するための環境探しです。

学習手段は独学とスクールの2択がありますが、私は独学は厳しいと考え、選択肢から外しました。

なぜなら、どんなスキルを身につければ3DCGモデラーになれるのか、自分で調べてもはっきりしないし、体系的なスキルを人から教えてもらった方が絶対に近道だと考えたからです。

というわけでスクール探しを開始しました。
3DCGを学べる場所はどこだと探してみて、デジタルハリウッドが一番に目につき、オンライン説明会を受けて「ここならやれそう!」と感じ、他の選択肢を大して吟味せずに入学を決意しました。

決意してからは3カ月で仕事を退職して東京に引っ越し、人生の再起をかけて再出発することになりました。

デジタルハリウッドではどんなことを学んできたの?

3DCGでは、数多くのさまざまなツールを使います。
ここで紹介するツールをすべての人が使うわけではありません。その人が何を表現したいかによって使用するツールの数や種類は変わってきます。

下記に私が学んできたツールについて紹介していきます。

Maya


現時点で最もメジャーな3DCGモデリングツールです。CG業界で使われているモデリングソフトは他にも3dsMaxやBlenderなどありますが、デジタルハリウッドではこれをメインに教えています。一年間通してMayaの基本操作についての授業がありました。

Illustrator/Photoshop

Illustratorはロゴやイラストのパーツを細かく制作することのできるツールで、Photoshopは画像編集に使うツールです。入学してから始めのころに数回の授業があります。Illustratorについては私はあまり活用する機会はありませんでしたが、Photoshopはモデルのテクスチャ作成に初期のころ使用していました。人によって使用頻度が変わるツールだと思います。

・AfterEffect

映像編集ツールです。中間制作や卒業制作で提出する映像作品を編集するために必要になります。中間制作が始まる前にメイン授業で勉強する機会がありました。

・Zbrush

モデルのしわや窪みといった細かいディティールを造形することのできるモデリングツールです。後期の専門授業で選択して受講しました。Mayaでは表現の難しい造形を可能にするツールのため、3DCGモデラーにとって重要なツールになります。

・Houdini

VFX(水や爆発といったエフェクト映像)を作成するためのツールです。後期の専門授業で選択して受講しました。エフェクトはモデリングとはだいぶ毛色が違い、エフェクターという専門的な職業があるくらいなので、モデラーとしては必要なスキルというわけではありません。私はHoudiniがどんなツールなのか一通り知っておきたいという気持ちで勉強してみました。

・UnrealEngine4(UE4)

有名なゲームエンジンですが、映像制作にも使うことができ、レンダリングマシンとしてとても優秀です。後期の専門授業で選択して受講しました。3DCGにおいて最も大きな障害はレンダリング時間が膨大にかかることだと私は考えています。UE4は、映像クオリティに制約があるものの、そのレンダリング時間を大幅に短縮することができるので、私的には神ツールです。

どんな生活スタイルで勉強してきたの?

前の仕事を続けながら勉強も並行して行う、というのは私にはきついだろうなと考えたので、退職して勉強に集中する環境を整えました。

週5日は3DCGの勉強や制作にあて、水曜日と土曜日を休日にするというルールで過ごしてきました。
卒業制作の締め切りが近づいてくると、週6日ペースで制作していました。

制作環境は、私の場合は自宅のPCを使っていました。授業もほとんどZoomのリモートで受講しました。

デジタルハリウッドの東京校のPCでの受講・制作ももちろんできますが、交通費と通学時間を節約したいのと、不特定の人にあまり会いたくないという理由から、基本的には自宅にひきこもっていました。

私は一人で黙々と作業することに苦痛を感じないタイプではあるのですが、何日もPCの前でCG制作を続けているのは想像以上に脳に負担がかかり、体がCG制作作業を拒否するような日が何回かあったため、定期的なストレス解消の手段は必要だと感じました。

私の場合、週2~3で近所のサウナに通うことでストレスを解消し、なんとか一年間突っ走ることができました。東京は銭湯があちこちにあるので、銭湯巡りもできて楽しかったです。

一年間勉強してきて、もし以前の仕事を続けながらデジタルハリウッドに通って勉強をするという選択を取っていたら、満足のいく作品づくりは私には無理だろうなと感じました。

平日8時間労働したあとの時間や休日を使って一年間で卒業制作作品を作り上げるとなると、相当な集中力と体力、計画力が必要になります。ガッツのある人なら可能かもしれませんが、半端な覚悟でそれをやると、満足のいくスキルを身につけることはかなり厳しいと思います。

できれば、一年間勉強に集中するための貯金を用意しておくか、実家で親のスネをかじることをおすすめします。

デジタルハリウッドで3DCGのスキルをちゃんと身につけられるの?

結論から言うと、自発的に学ぼうとする人にとっては良い環境ですが、消極的な人だと大したスキルは身につかないでしょう。

デジタルハリウッドの授業では、ソフトの基本的な操作方法は教えてくれますが、その先の応用的な部分については各自で独学で身につける必要があります。これは、一年間という期間は3DCGを学ぶには想像以上に時間がなく、教える内容をある程度絞る必要があるからです。

そして、就職レベルの3DCGスキルを身につけるとなると、応用的なスキルを学ぶことからは避けられません。そのため、スクールで勉強する時間よりも、独学の時間の方が割合としては大きいです。

「ならスクールに通う価値なんてほとんどないじゃん」と感じる方もいるかと思われますが、スクールに通う最大のメリットは、分からないことがあればすぐに先生に質問することができるという点にあります。

3DCGのスキルを身につけるのに一番の方法は、自主制作で3DCG作品を作り上げることです。
その過程で「このモデルをこういう形状にしたいけどどうすればいい?」「こういう見た目のテクスチャをつくりたいけど作り方が思いつかない」といった疑問が必ず出てきます。

独学だと自分だけの力で解決しなければなりませんが、スクールに通っていれば、先生にSlackを使っていつでも質問することができます。自分で調べる時間を減らすことで効率よくCG制作に勤しむことができ、何より迷わず勉強することができるという安心感が得られます。

いつでも質問できる環境を手に入れるためにスクールに高いお金を払っている、と言っても過言ではありません。

裏を返せば、先生や周りの人に質問をしないのであれば、スクールに通う意味はあまりないということです。

この記事を見てくださり、デジタルハリウッドへの入学を検討している方は、もしここで勉強するのであれば、どんな小さな問題だとしても遠慮せずに先生にガンガン質問していくことをおすすめします。

さいごに

一年間で3DCGのスキルを就職レベルまで体得するというのは、生半可なことでは成し遂げることはできないと感じました。

私が在籍していたクラスのクラスメイト達も、途中で数人脱落して見かけなくなり、残念に思いました。何か事情があるかもしれませんが、スクールに入れば誰でも3DCGデザイナーになれるという甘い考えは幻想であると実感しました。

とはいえ、デジタルハリウッドは3DCGを学ぶ環境としてはとても充実した環境だと思うので、デジタルハリウッドにこれから入学するという方には、「なんとしても3DCG業界に入ってやる」という強い意志を持って勉強に臨んでほしいです。

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